膀胱癌が見つかった。(その3、メジャーリーガーのTシャツ)

紹介された病院へ

8月某日、家内と紹介された総合病院へ重い足取りで赴く。第一駐車場は満車。第二駐車場の端が空いていたのでそこに停める。めちゃめちゃ暑い日。今日の気温予想は37度。フロントガラスに日よけシェードを付ける。

医院入口では例の如く検温と消毒。このコロナ騒ぎなのに院内はごった返し。来院する前に渡されていた毎日の体温チェック表を持参する。これをつけていないと来院する事が出来ないシステムらしい。どうやら一度クラスターが発生していた病院だったらしく、かなり厳しくなっている。

紹介状を受付に提出。手続きを済まし泌尿科ブースへ行く。高齢の方々が列をなしている。じっと順番をまっていたが、横からチャライにーちゃんが横入りをする。いつも思うのだが、こういう方々は自由だ。受付の看護師も機嫌わるそうで・・・。

再度膀胱鏡

受付を済ませ、診察室の前で待つように言われる。この込み具合だと予約してたとしても待たされるだろうと覚悟していたのだが以外とすぐに呼ばれた。と思ったら、「はいこれね~」といった感じで検尿用コップを渡される。同フロアの奥にあるトイレに行って検尿する。家から出る前にトイレに行っておいたので少ししか出ない。なんとか絞り出したそのコップを受付口に渡し、また泌尿科に戻る。やはり、そこからが長い。

30分程待つとやっと呼ばれ、診察室の扉を掛ける。若い先生。というか、自分が歳食ってるからそう見えるのか。早速診察。泌尿器科医院で撮った内視鏡データをUSBと思われるもので持って行ったのだが、データが見れないからもう一度カメラでみさせてくれという。

なんでや。

膀胱内視鏡痛いんだよ。怖いんだよ。特に後が。またやられるのか。うぐぐ。

その前にエコーで膀胱を見る。膀胱もそうだが、尿管が腫れている事を指摘される。出口がふさがれて出にくくなっているらしい。これは初耳。あの泌尿器科医院はそんな事何も言わなかった。

エコーが終わったので、いよいよその膀胱内視鏡。

前回と同じように黒い紙のパンツ(今度は前がふんどしのようにめくれるタイプ)をはかされ、抗生物質を前もって飲まされる(種状の黄色い薬を二錠)そして、案の定、水で咽る。

ごっほごほ!!

ただ水を飲んでいるだけで良く咽る。これも何か原因があるのだろうか。

今度はベッドに横たわるのではなく、豪華なソファーのようなものに座らされる。サンダーバード宜しくまずは横に回転し、それから足が上に向く形で背もたれも一緒に倒れる。体勢はこれからアポロ11号で月に発射せんばかりだ。そしてそのまま足が左右に御開帳。ウイーンと股が痛くなる位まで開く。結構恥ずかしい。分娩台のようなかっこをさせられるのは初めてだ。

カーテンで遮られているが、考える余裕、見る余裕なし。案内してくれたのは女医さんだったが、さっきの若い先生が現れ、私のモノの先を消毒してくれている。2,3分後、前回と同じように先に冷たい何かを突っ込まれる。

いたい。

それからまた何かを突っ込まれ、冷たいものがお尻の辺りを通り、やはり前立腺あたりを通過する時に激痛が走る。勝手に腰が浮く。

ぐおっ!!

そしてきつい尿意を感じる。膀胱内をまさぐられている。食塩水を注入されさらに尿意が増す。

悪性の腫瘍

しばらく観察しているようで、写真を撮っていると思われる「ピコーン」という音が続く。すると、

「あぁ~」

と何かを発見したような先生から溜息のような声が聞こえる。そのものを見つけたのだろう。

それにしても辛い。5分ぐらいだろうか。やっと抜いてくれたのだが股間が痛い。

先生が私に哀れな顔を見せ、

担当医

「悪性の腫瘍のようです」

と話しかけてきた。後で詳しく聞くだろうから、その場ではそれ以上何も質問しなかった。というか、返す言葉もなく、気力もない。

尿意を我慢しながらのMRI

これが終わると続いて、MRI。

先ほどの膀胱鏡検査時に食塩水を入れられてるこの尿意を我慢した状態でMRIをとるらしい。キツイ。

MRIの受付にファイルを出すと、右奥の廊下の先にある閉じている扉を開けてはいってとの指示。指示通り右に曲がると行き止まりで、前左右に3つのドアがある。どれに入れば良いのか分からない。どれも「使用中」の赤ランプが点いているから勝手にはいれない。うーんと迷っていると正面のドアが開き、手招きしてくれた。

ここで家内とは一旦お別れ。

着替えを渡されたので、隅のカーテン内で着替える。着替えるのは上下かと思ったら下だけ。着替え終わったら金属探知機のような装置で体をチェックされ、更にペースメーカー等の金属がないかを問われる。最後に名前と生年月日を聞かれた。これが各検査でチェック項目らしく各科で毎回聞かれる事になる。これはどの病院でもそのようだ。

MRI検査室は左右に一つずつあり、左側では既に検査が行われているようでゴンゴン音がしていて、オペレータがモニターを凝視している。右は準備中で開いてあり、奥にその装置がみえる。例の如く、超電導用冷却装置なのか、プッシュンプッシュンと蒸気機関のような音がする。

MRIの大きな白いドーナツ型の機械の前にベッドがあり、そこに仰向けで方向は足から入るように横になる。いつもは頭からだが、今回は足側からだ。

古代エジプト、ツタンカーメンの棺のように手を胸の前に交差させられ、空気ポンプのような小さなスイッチを持たされる。膀胱あたりに重い何かをのせられ、そして、動かないように縛られる。足も両側か衝立のようなもので固定される。耳は耳栓ではなくヘッドフォンのような、所謂イヤーマフをかぶせられる。担当医は何かを話しているが、イヤーマフを付けているので聞き取れない。たぶん大事な事ではない感じだったので何も言わずスルー。

検査時間は2、30分という。何度受けたか分からないMRIだが、やはりあの閉塞感は苦手だが、我慢するしかない。でも今回の機械は足から入るタイプで、機械自体の穴のスペースは広く、閉塞感はあまりない。成程、進化しているんだな。

初めてのMRI中断

始まって暫くすると指輪がその音に合わせて振動する。そこで気が付く。やばい指輪取ってなかった。その渡されていた空気ポンプのような緊急スイッチを恐る恐る押す。「ピー」と鳴り担当医が飛んできた。指輪の事を話すと、どうやら指輪は大丈夫だったらしい。気になるので外して渡した。で、ロッカーのカギは担当医が持っているというなんだか意味不明なシステムだ。

ゴウンゴウン、ガガガガ、ピピピピ、

と色んな音がする。20分程度で終了。外には老人が丸椅子で待っていた。待たずに検査出来た私はタイミングが良かったのか。

検査室から出て家内と再会。

某メジャーリーガー

受付に戻ると次は採血。最初に検尿を行った場所で、すぐに部屋に通された。例の如く名前と生年月日のチェック。採血のカプセルは6つ。

「多いですね、手術ですか?」

と逆に聞かれ「そうです」と答えた。採血のカプセルに書かれたの名前を確認させられるのだが、小さいので眼鏡を外さないと見えない。老眼。

アルコールのかぶれを確認され、採血開始。

採血中、話をするようにいわれているのか「野球好きなんですか?」と聞かれた。その日は某メジャーリーグ選手が派手にプリントされている服を着ていっていたからだ。「いや、そうでもないんですけど」と取り合えず答えた。私は野球にはあまり興味が無い。何故着ていったかというと、貰った服だったからで、ファッション等にもあまり拘りはなく、適当に着て行った服だった。ただ、野球に興味は無くても、そのメジャーリーガーの人柄は嫌いじゃなった。看護師にそういわれてとても恥ずかしくなる。「すごい選手ですよね」といわれ「そうですね。嫌いな人いないですよね」とまた適当に答える。「こういう服は普通では売ってないんですよね」聞いてきたので、「ファンクラブ会員じゃないと買えなかったものだそうです」と、貰ったことを含ませて適当に答えた。

服の柄が写る

次は心電図。暑いので体が汗ばんでいる事を謝ってから測定。

その次がレントゲン。

レントゲンではその服を着たままだったのだが、暫くしたら技師が出て来て、

「ごめん、服の柄が写る」

というので脱いで、取り直しを含め5,6枚とられた。これまた恥ずかしい。

終わったら、待ってた家内に服の話をして笑った。貰った人には悪いが、人前でこの服を二度と着る事はないだろう。

朝から来ていたが、もう昼を過ぎている。心電図は飯を食ってからでも良いと言われていたが、とにかく早く終わらせたいという思いから、そんな事はすっかり頭から飛んで受けてしまった。元の泌尿器科の受付に戻すと、全部やったの?といわれてから気が付いた。

これで検査は終わり。診察はまだ後なので、ゆっくりごはん食べてきていいというので遅めの昼食にする事にした。レストランがあるがコロナが気になるからそこでは食べる気にならない。コンビニで弁当二つとおやつ+コーヒー2つを買う。1,500円。高いなぁ。

駐車場の車に戻りエアコン全開。電話で会社の一仕事を済ませてから車の中で飯を食らう。

検査後の診察

これからどうなるのか色々考えながら食べるが、おやつ用に買ったパンも食べられる位食欲は有った。暫くしてから泌尿器科に戻り、待合で座っていたらこれまた以外にもすぐに呼ばれた。

担当医曰く、写真でみると深刻だったが、MRIで見る限りではT1だと。ただ、腫瘍の「顔つき」が悪いので実際に腫瘍を摘出し、病理検査に回してみないと筋層に達しているかどうかは判断できないと。

膀胱癌は、Ta→T1→T2と深刻で、T2以降になると腫瘍が筋層に達しているので、その場合は膀胱全摘出らしい。もしそうなると10時間の大手術で大ごと。そして人工肛門を付ける事になるらしい。

知らなかった私はそれを聞いて愕然とする。冷や汗。今の医学では胃のように部分的に摘出が出来ないのか。どうやら腸等とは違い、尿は絶えず出てくるから出来ないらしい。

そうなのか・・・・。迂闊だった。

もっと楽観的に考えていた。何が初期の癌だ。あの泌尿器科医院とこのコロナ禍、そして休みも取れなかった程の激務を恨んでしまう。

手術は内視鏡を使う「経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)」というらしい。1cm程度の管を尿道から入れ、膀胱に出来た腫瘍を切り取る方法。手術時間は2時間ぐらいだそうだ。麻酔は下半身麻酔。入院期間は最短で5日。プラス5日位みてくれとの事。入院日は8月末に決定。丁度大きな納品のある日だったが会社には勘弁してもらう。

癌の原因

ふと疑問に思ったのでその若い主治医に、膀胱癌は遺伝なのか?と聞くと、そうではなく、塗料等の有機溶剤や喫煙が主な原因だと。

そうか。俺はガソリンスタンドや自動車整備士、溶接工のような事をずっとしてきた。スタンドで当時販売していたハイオクガソリンのMTBEは発がん性があると聞いていた。それに、ブレーキクリーナーや塗料のような有機溶剤は毎日のように吸っていた。高用量暴露ってやつ。原因はこれか?

アスベストや塵肺のように、数十年後に現れる症状とはこの事なんだ。自分がこうなるなんて思いもしなかった。有機溶剤が危ないなんて誰にも言われなかったし知らなかった。整備士の試験にも出てこなかった。・・・いや、忘れてるだけか?

若い同業種の方々にも将来こんな辛い思いをしてほしくないので、これからこのブログで、有機溶剤やブレーキクリーナー、溶接フューム等の危険性をわかりやすいように説明していこうと思う。

早速一つ言っておきたいのが、溶接面だけでマスクをせずに溶接をしている映像、風景をよく見るが、溶接時に出る煙を「溶接フューム」といって、吸い込むと肺に悪影響がある。国家検定DS2規格以上のマスクする事で塵肺の危険性を回避できる事を知ってほしい。

何より、溶接機械は一歩間違えば感電する非常に恐ろしい代物なので、その危険性、操作方法を知っておかないと事故に繋がる。そして、その事業者は労働安全衛生法令に基づき、従業員に対して危険性を認知させる特別教育を受けさせなければならい。

つづく。