雨水貯留タンク(200L)を自作してみる(その1、ドラム缶を購入)

序章:一寸にも足らない戯言

最近は自然災害や電力不足等、様々な異常気象に加え、日本の経済状況に比例し、需要に対しての電力や、災害対策、物資の供給に対して政府の対応が追い付いていない感が払拭できない。

そうなれば、一般市民は政治を当てにはできず仕方なく自衛する訳だが、我々に出来る対策と言っても大した事は出来ない。とりあえずは自然災害等でライフラインが寸断された場合の対策を打つぐらいしか思いつかない私なのだが、とりあえずは雨が嫌と言う程降る日もあれば、干ばつクラスの猛暑が続いたりするこの気象に対しての断水対策を取る事にする。

雨水タンク(雨水貯留施設)補助金

自治体によっては、雨水タンク設置に関して補助金がでるらしい。内容によれば、既製品タンクをメーカーから”事前に”見積もりを取る必要がある。という事は自作では出ないという事。申請もお役所仕事は相も変わらず面倒くさい。この補助金制度はしぶしぶ設定して、願わくば利用してくれるなと言わんばかりの面倒くささ。もう少しハードルを下げてくれないと誰も見向きもしない。国外には気前よく金を出すが国民へのリターンが渋すぎる事は、火を見るよりも明らかだ。

ネットで雨水タンクを物色

という事で雨水タンクを設置して断水時に備えようという事にした。副産物としての節水による水道代の節約効果は費用がかさむため、ハイブリッド車同様、効果が出ないことを織り込み済みとする。

早速ネットで雨水タンクを検索すると、うじゃうじゃと出てくるのだがどれもこれも中途半端で耐久性もあまりなさそうな物ばかり。そして、何故か金額設定が万を超える。大体はプラスチック等の非金属製で、容量が100Lだったりそれ以下だったり。そして、しっかりと固定しておかないと台風や地震などですぐに飛んだり倒れたりしそうな私から見ると貧弱なもの。また、日光を遮断できないとすぐに藻が発生してしまう。

という事になるとやはり光を遮断できる安定性のある金属製で、容量は最低でも100リッターは欲しい。かといってステンレスのがっちりした大容量タイプだと個人では購入できそうもない金額で、設置には重機が必要なおおがかりな物しかない。

雨水タンクを設置するユーザの動機、需要を考えると、費用として安く上げなければ割に合わない筈なのだが、恐らくはメーカー側も補助金を想定した価格設定をしているようで、こういった背景があるから、本当に使い勝手のコストパフォーマンスにあふれた良い優れた商品が出てこないのだと考えている。自治体も本当に普及させたいと考えるのなら、家庭用に配布できる数種類のタンクを用意して希望者に設置してやれば良いのではないのか。設置、配布には役所が請負い、また、定期的に役所がチェックすればいい話だ。そのための役所じゃないのか。あれ出来ないこれ難しいではなく、何でも屋に徹しろと言いたい。勿論、メーカーとの談合、謝礼なんかはもっての外だ。

閑話休題

自作計画勃発

じゃぁ、ドラム缶で作りますかという事で計画を立てる。

設計条件は以下の通り。

雨水タンク設計条件
  • 雨水タンク本体はドラム缶を利用し、設置後も中身を清掃できるオープンタイプとする。
  • 水面レベルを確認できるレベルモニタ管(液面計)を設置する。
  • 雨水は上からつぎ足すのではなく、循環を狙い「先入先出し」用のホースを底まで伸ばし、タンク底から新しい雨水を流し溜め、古い水は上部から溢れるように排水する仕組みにする。
  • 蛇口はじょうろなどが入るスペースを設ける為、少し上に設置する。
  • 散水用は水抜きを兼ね、また、少しでも圧力を必要とするのでバルブ付きの取り出し口を最下部に設置する。
  • 散水用接続部は、ワンタッチ散水栓ニップルが接続可能とする。
  • 雨水取り入れは、サイフォン管現象を利用するので、IN、OUT両方に水がたまった状態なり、排出時に密閉となってタンクが真空状態にならないよう空気穴を上部に設置する。また、逆流しないようにワンウェイバルブを併設する。
  • 雨水タンクが満タンになった場合は上部からあふれた分を再度雨樋側へ戻す構造とする。決して下水に流さない。(←これ重要)

雨樋から雨水を取り入れる方法は、既に数千円で市販されているのだが、そこはそれ、少しでも安く上げたいので自作する。構造は市販のものを参考とした。雨水分離部分とタンクの位置関係は、前述のようにサイフォン管現象を利用する事でお互いの高さや、綱を渡すような取り回しをすることなく、雨樋から離れた所へタンクを設置可能とし、また、大雨でもタンク側に無理が掛からないように雨水分岐部分で溢れて逃がす構造とする。

雨水分岐構造
  • 雨水分岐部分に雨水を溜めるチャンバーを用意し、チャンバーに溜まった雨水だけを雨水タンクに導けるようにする。チャンバーから溢れた雨水は通常通り樋に戻るようにする。
  • チャンバーの上にはテーパー状に網を張り、異物が入り込みにくくする。
  • チャンバー下部にピンホールを設け、雨が止み、流量が無くなったらチャンバーに溜まった水は徐々にピンホールから滲み出るようにし、長時間留まらないようにする。ただ、すぐに砂等で詰まってしまうとは思うので清掃は定期的に行う必要がある。まぁ、溜まっても気にしなければ良いだけなのだが。
  • 定期的に清掃ができるよう本体自体が分割出来、取り外しが出来るようにする。

水圧

問題は、散水用圧力がこのドラム缶でどの位有るのかという事が判らない。通常、水道の蛇口からの水圧は0.15MPa~0.4MPaらしい。200Lもあれば、散水に必要な圧力があるのではと予想していたのだが、計算してみると全く足りない事が判った。

中学一年生の理科の問題で出てくる計算だそうで、

ドラム缶水圧計算
  • ドラム缶内径 567㎜
  • ドラム缶内高 845㎜
  • 水の重さ約200㎏
  • 100g=1ニュートンとする。(本来は0.98ニュートン)

公式:水の重さ(ニュートン)×底辺面積(㎡)=水圧(Pa)

底辺面積は0.283m×0.283m×π = 約0.252㎡

体積は面積×高さなので 0.252㎡×0.845m = 0.213㎥

水200L=200㎏ (0.213 ㎥×1,000kg/㎥ = 213kg)と考えて、100gで約1ニュートンなので、200㎏は約2,000ニュートン

となると、2,000ニュートン×0.252㎡=504Pa

MPaになおすと、0.0005Mpaという事で全然足らない事が判る。(合ってるかな?)

もし、0.3MPa程まで圧力を上げようと思うと、単純計算で50mという給水塔以上の高さに持ち上げなければならない。当然これは無理なので、雨水タンクが完成したら後で水圧ポンプを付ける事にする。

あとは、光合成に必要な光がタンクに入ると苔が発生するので、液面計から入る光をどうするかも後日検討する。

200リッタードラム缶を購入

まずは、雨水タンク本体の準備。

某サイトにて検索すると5,000円程で200Lの中古ドラム缶が売っている。ただ、送料がその約倍程し、計1万円程になる。それならと地元で売買の出来るサイトを検討してみる。

近くなので自分で取りに行けば2,000円程で販売している方が居られたので早速交渉してみる。が、最初のメールはすぐに返事があったが、詳細を確認すると梨の礫。聞かれちゃまずい事でもあるのか。運営会社に確認すると、「そういう方も居られますのでしょうがない。」との回答だった。一発目の取引でこれにぶち当たるという事は、かなりの確率で存在するんだろうなと思わざるを得なく、取引に気を使わなければならないのは仕事だけで十分だという事でそのドラム缶は諦め、某サイトで商品の倍の送料を支払って買う事にした。

ただ、一般家庭への輸送は駄目等の制約がある場合があって、会社に送って車で引き取りに行くか・・・等考えたが、会社への事情の説明も面倒くさいので、佐川急便を取り扱っているサイトで注文する事が出来た。佐川さんは一般家庭でも文句なく届けてくれるので好感がもてる。最近は「なんとか改革」等で、人員を確保する事にばかり力を入れ、努力を惜しむ会社が増えてきているこの悲しい現状の中、こういう企業は伸びてほしいと思うのである。

ドラム缶到着

ドラム缶には心ばかりのラッピングが巻かれたこの状態で到着した。

まぁね。こんなもんですよ。ただ、個人売買に気を遣うとか、会社に送らなければいけないとかの苦労を考えれば倍の値段でも安いものかもしれない。

サイトの写真では、むら等はないように映っていたが、まぁ、それは中古で「状態は個々によって違う」という注意書きの通りものだった。

外は後で塗装するつもりなのでどうでもいいのだが、問題は内側だ。

何が入っていたのか分からないが、匂いとするならば生臭い匂いが少しする。それと、底の方には少し錆がついている。ふむ。この値段だと許容範囲内ではあるが、日本のサービスも質が落ちたと言わざるを得ない。なにもこの業者だけではなく、日本全体の企業のサービスレベルが落ちているのは既知の事実。

例えば、あるサービスの審査等に申し込んだ場合、合格すれば勿論連絡は来るだろうが、審査に落ちた場合は連絡も無しでほったらかし等、昔では企業として何等かの連絡できっちりとけじめをつけててくれていたのだが、人員不足や働き方改革を隠れ蓑にしてずぼらをするような、昔ではありえない事が今平然と行われているこの状況に、感情が嗚咽するほど落胆しているのは私だけだろうか。

きちっとする勤勉な企業の資質が日本企業だと感じていたが、治安が低下するように企業サービスが低下している状況に対して嘆かわしいと言う他に何があるだろう。

閑話休題

何が入っていたのか少し掃除してみると、茶色い物が付着する。

これはこの内側の色が剥げたのか、それとも内容物が付着していたのかは分からない。

配管部品と穴あけ用工具を入手する

俄か設計図に書いた部品は、ほぼ塩ビ配管でまかなう。これは接着が簡単で且つ優れているので非常に扱いやすい。

以下の物を仕入れる(水圧ポンプは後で揃える)

  • 蛇口(樹脂製) ×1
  • TSバルブソケット(呼び径13) ×3
  • TSエルボ 給水栓用(呼び径13) ×3
  • アラムPVCニップル(ホース内径12) ×1
  • TSソケット 給水栓用(呼び径13) ×2
  • 配管継手 ボールバルブ ×1
  • ネジニップル  ×1
  • 透明塩ビパイプ  ×1m
  • 異径つなぎ手(インクリーザー)呼び径:50×40 ×1
  • 異径つなぎ手(インクリーザー)呼び径:75×50 ×2
  • パッキン 10個
  • ホールソー21mm ×1
  • 塩ビ配管接着剤(既存)

これで必要な部品は揃った。

ドラム缶カバー

もう一つ、ドラム缶の上部は凹型なので水が溜まるとすぐに錆びると思うので、専用のカバーもそろえる。

ちょっとデカかったが、何とか機能はしてくれそう。デカかった理由は、オープンドラムの固定用バンドがデカいタイプと今回の小さいタイプがあったようで、これはそのデカいタイプ用だったらしい。

これはDC-2という商品名で、サイズは640mm×60mm。一方クローズ用としてのDC-1という商品名で発売されていてサイズは605mm×55mmなので、こちらの方がよかったのかも。ただし、この素材はポリエチレンなので静電気が帯びやすく、すぐに砂ぼこりが付いてしまうのが難点。

次はドラム缶の改造を行う。