WPW(ウォルフ・パーキンソン・ホワイト)症候群(その3,病名が判明した日)

発作が止まらない

相変わらず心臓の発作は発生していた。ある時、年末繁忙期という事もあり、かなりストレスにさらされた年末。やはり発作が発生してしまう。

上司に説明し、仮眠室で横になっていたが止まらない。かなり気持ち悪くなってきて、息もゼイゼイするようになる。これはまずい。救急車を呼んでもらおうと思っても、サービス業なのでスタッフは出払っていて誰もいない。しょうがないから這いつくばって電話がある机に向かい、なんとか電話機に手を伸ばして119番に電話する。

119番

消防署です。火事ですか?救急ですか?

救急お願いします。本人です。住所は・・・

と言おうと思ったが力尽きて、床にへばってしまった。受話器が机からぷらーんと回転しながら垂れさがり、そこから「もしもーし!もしもーし!」という声が聞こえる。

初めて聞く電話の呼び鈴

応えたいけど力がでない。なんとか力を振り絞って、受話器を取り、症状と住所を知らせ電話を切る。なんとかベッドにもどるとすぐに電話が鳴った。しかし、普通の鳴動ではなく、

「リーーーーーーーーーーーン・・・」

と鳴っている。通常の「リーーン、リーーン」と鳴動が途切れる呼び鈴ではなく、続けて途切れない初めて聞く電話の呼び鈴。なんだ?

もう力がないのでベットで横になって取らずにいると上司戻ってきて出てくれて、どうやらさっき電話した119から確認の電話だったらしく、「おまえ救急に電話したか?!」と言ってきた。

電話番号は伝えてなかった筈だが、着信電話番号って消防署とかの政府機関からは判るもんなんだなぁと、以外と冷静に判断しながら、「しました~」と力なくこたえる。そのまま対応してくれ、暫くしたら救急車の音が聞こえてきた。人生で2度目の救急車。しかし、受け入れ先がなかなか決まらなく、暫く救急車の中で待たされる。何とか決まったらしく動き出した。それにしても変な呼び鈴の音。どういう意味があるのだろうか?

そこからあまり記憶が無いのだが、病院に着いたが年末だからか病床がいっぱいで診察室の長椅子に寝かされ、脈をとったり血圧を測ったり色々処置してくれている。

名も知らぬ医師

うーん・・・。何々を何ミリ注射だ。

薬剤の名前は何か覚えていないが、何か注射を打たれ首元が暖かくなる。しかし、発作はおさまらない。

名も知らぬ医師

追加で何ミリだ!早く!

もうろうとしている頭で医師の言葉を聞く。あ、おれやばいんか。あぁ~と思っていると発作が止まった。急に血が巡りだし体が暖かくなる。心臓もシン・・・と静かになった。

医師も私もホッとし、暫くしたら体調も良くなりだしたので長椅子から体を起こす。

病名はWPW

医師に「これは一体なんなんですか?」と聞くと、医師は私の手をギュッと握ってくれて、「WPWという症状で・・・」と説明してくれた。

手を握ってくれたのがどういう意味合いなのか、そんなやばい状態だったのだろうかと少し困惑しがら説明を聞く。だぶりゅぴー・・なに?色々説明してくれるのだが、どうも簡単には直らないような説明をしてくれたと思う。暫くして会社の部長さんが迎えに来てくれて、車に乗せて家へ送ってもらった。その日はそのまま休み・・・。

数日後、その部長さんと病状について相談し、負担を軽減する為に勤務部署を家の近くに変更してくれた。今考えるとすごく気を使ってくれていた良い会社だった。

それから体調も良く、暫く何事も起こらず過ごしていたが、知り合いの看護婦さん(←当時)をしている人に話をしたら、その症状の名医を知っていると病院を紹介してくれた。

アブレーション

後日、早速その病院で診察してもらう。

WPW(Wolff Parkinson White)症候群という症状は、正常なら心臓を鼓動させる為の信号が発生し心臓全体に伝わるが、その伝わる所で、余計な神経(副伝導路)が有る所為で、その信号がループしてしまい心臓の鼓動が200から300近く発生してしまう症状。普通考えると鼓動が速ければ血圧が高くなると思うのだが、心臓が完全に収縮する前に拡張するので、所謂細動、痙攣のような動作をするのでポンプの役目を果たさなくなる。なので心臓はバクバク言っているのに貧血の症状が出てしまうのだ。

これを治すにはアブレーションという施術を行い、足の付け根から血管を伝ってカテーテルを心臓まで通し、余計な神経を焼き切るのだそうだ。へぇ、そんな事できるんだと感心。兎に角、この症状を皆が認知してくれ、そして治療方法があると判った事は、私にとって精神的な安堵感がとても大きかった。入院は一週間程度。早速会社に説明し、入院の手続きをとる。

しかし、その時一人暮らし。入院生活に不安があったが何とかなるだろとあっけらかん。その時はまだ23歳。若かったので恐れ知らずだった。

つづく。